プロレスの枠内の攻撃に、急所への攻撃は無い。
いく重たく痛い技であっても、それがプロレスの技ならば相手は受ける義務があるからである。
実は、こういうプロレスの強さのイメージの特性を上手く利用し、格闘技性とは別の部分で強さのイメージを作り出す事に成功したのはUWF勢であった。
ユニバーサルが崩壊し、新日本に上がったU戦士は、藤波、木村といった軽量かつ受けの比率が多い選手相手に、どんどんプロレスの枠内での痛く重い技を繰り出して行った。
プロレスの範疇の技であるので受けざるを得ない。
かつ、相手にいくらきつい技を放っても、相手に倍返し出来る体力と技術は無い。
結果として実際の勝敗等ほとんど意味を成さないほどUWF勢は圧倒的な強さのイメージを真剣勝負ではなく、プロレスの特性を生かして創り上げてしまったのだ。
こういったプロレスの特性を生かして強さのイメージを作り出して行ったのが、何度も記して来たが、橋本であり、ベイダーでもあった。
しかし、いかにプロレスの枠内であっても、いささか痛さと重さの度合いが強ければ、受ける業務を完遂しない相手も出てくるはずである。
橋本が時としてドン・フライやスティーヴ・ウィリアムスを怒らせたシーンもあったが、なんとか試合は成立していた。
鍛えられない急所へのあきらかな攻撃ではない以上、相手に怒る資格は無いのだから。
Uインターと新日本との闘いでは、逆に、新日本勢がプロレスの枠内での強さのイメージを発揮した。
Uインター勢より体格で上回る新日本勢は、実際の勝敗以上に、試合での強さのイメージの死守に限りなくこだわっているように見えた。
時として金原のような、いささか、純プロレスの成立しにくい選手相手にも、新日本勢はリアルな技としてのタックルが放てる事が利点であったのか、金原にも強さのイメージを奪われる事を最低限に留めたと私は思っている。
金原を橋本と置き換えてみたら良い。
金原の攻撃は激しいキックであっても、別に急所を狙って来るわけではない。
プロレスの枠内ならば金原のキックを橋本のキックのように受けたら良かった。
しかし、あれだけ痛いキックを受けてしまっては、完全に強さのイメージを奪い取られてしまう。
結果としてタックル技術に秀でていた新日本勢力が、相手の受けに頼らず放てるリアルな技術を持って、Uインターの強さのイメージを封じ込めたのである。
私は橋本対三沢・秋山の試合は、純プロレスとしての試合の経験しか無い三沢や秋山のミステイクだったと思っている。
三沢や秋山は橋本の攻撃が痛く重くとも、プロレスの枠内の技ならば、受ける義務を貫く純プロレスの選手で有る。
しかし、結果として、あの攻撃を喰らってリアルな痛さにもがき、のたうちまわれぱ、強さのイメージなど全てを橋本に奪い去られてしまう。
受けなければ良かったのだと私は思っている。
金原相手に石沢、永田がそうしたように組み付いて封じ込めたら良かったのだ。
それだけの技術が三沢にも秋山にもあるのだから。
それでも強引に蹴りを橋本が放とうとすれば、プロレスの枠内で、リアルな攻防シーンが展開される。
実はその緊張感こそアントニオ猪木のプロレスであったと私は思っているが、もっとも、三沢や秋山にはそのような発想等無くて当然である。
技の受け合いで成立するプロレスの使い手なのだから。
しかし、私はこの試合を側で観て、何かを感じた選手がノアにいていると信じている。
杉浦である。
以後、他団体特に格闘技系の団体の選手と、プロレスで当たる事が有れば、相手に何もさせない杉浦の姿を見る事が何度か有った。
グレコの差しや、スタンドのコントロールで、相手をあしらっている姿を観客に見せつけているのである。
アレクサンダー大塚も、この動きにやられた。
杉浦は、三沢、秋山対橋本の試合で、いかにプロレスに強さのイメージが大切かを気付いたような気がしてならない。
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