2007年12月22日

船木誠勝の体格と精神の特性

私は等身大の船木というのは観た事が無い。
船木は若手の頃より、レスラーらしくない柔和な表情を持つ男でもあった。
しかし、自身の、その優しさを頑にファンに対して見せる事の無いストイックでプライドの高い男でもあった。
そのストイックさ、プライドの高さが等身大の船木の優しさや弱さを隠し、等身大の船木以上の幻想を抱かせてくれたものだ。
しかし船木の幻想とはパンクラスに山田学が参戦して崩壊してしまう。
技術的にはそれほどの差はなくとも、リアルで闘ってきた歴史においてパンクラス勢と当時の修斗の差を痛感するほど山田学は日本勢の中では飛び抜けてしまっていたのだ。
覚悟を決めた表情でリングに上がった船木は、結局、打撃でも、決め合いでも、一本を許し、完敗を喫した。
しかし、その後、船木は決して笑顔など見せる事無く、険しい表情でリングを降りた。
完敗しても、なお、プライドや意地を守ろうとした船木が、船木自身の幻想を守ってくれたのである。
船木が変わってきたのはマチャド柔術に出稽古にいったあたりからである。
少なくとも「決めっこ」においては当時の格闘技界においても長いキャリアを持つ男でもある。
自身の特性を生かすためには、「決め」に至までの軌道の技術を完成する事であるのに、いたずら柔術の技術を取り入れようとしてしまった。
しかも中途半端に取り入れた結果は、船木の後に柔術を知った連中にも及ばない程度の技術でしか無かった。
実は船木の最大の特性とは、そのリーチの長さである。
プライドを持って高校レスリングの実績を持つ鈴木とスパーを繰り返してきた船木は、本能的に高校生程度のレスリング技術に対応できる男でもある。
身長に対してリーチの長い船木はレスリングに適した男なのである。
しかし、それも自身の体格的特性と決めの技術を持つ選手としての特性を持った上で成り立つ技術なのである。
私が忘れられないのはモーリス・スミスとの決着戦であった。
鈴木みのるの高校レスリング特有のストレートなタックルを切りまくったスミスを、船木は、ものすごい完璧なタックルでテイクダウンさせた。
後で知ったが、高橋から教えてもらった技術を使ったという事であったが、当時の船木が高橋に弟子入りしていた訳でもなかろう。
つまりプライドと体格的特性と基盤にした船木ならば、我々アマチュアレスラーが実践できないほどの動きをリアルに使える男なのでもある。
ヒクソン戦の前、一からレスリング技術を習得しようとした船木は、自身の特性を忘れたかのように、高校一年生程度のレスリング技術を頼りに、実におぼつかない表情で、ヒクソンの片足タックルを基本通りにさばいた。
しかし、その表情は弱気の垣間見える高校生の初心者のようでもあった。
そんな船木のどこに魅力が有るのだろうか?
船木の魅力と武器とは自身のプライドと体格的特性でしかないのだ。
船木がパンクラス中期以後、立ち腰になったことで、船木のリーチの高さ、つまり、懐の深さの特性は使えなくなってしまった。
実はUWF後期、疑似リアルで見せた船木のフォーム、動きは、船木のプライドと体格的特性を生かす理想型の動きであった。
私はどんな批判も承知の上で書くが、あのフォーム、動きこそ、船木の理想の闘いであったと思っている。
中学から入り、スクワットや意味の無い練習を耐え抜いてきた船木。
自分の手を水平にのばした時の身長が、自身の身長を遥かにオーバーする日本人離れした体格を持つ船木、その根性と体格の特性が最も如実に疑似ファイトとはいえ現れていたのがUWF後期だということである。
あの船木の体格を持ってUWF時代のやや浅いクラウチングスタイルにはタックルも入りにくいであろう。
そして自身のプライドを持った打撃も今よりはは放ちやすいであろう。
私はレスリング経験者として、プロレスファンとして、実はあの時の船木ほど感情移入できる選手はいなかった。
しかし自身の体格的特性とプライドを忘れた船木は今更、何を持って違う技術に頼るのか?
プライドを忘れた船木ならばヒクソン戦の二の舞いであろう。
そして体格的特性を忘れた船木ならばもっと二の舞いであろう。
ボーっとした表情で、立ち腰で、リラックスした表情を意識しすぎて、あっさりテイクダウンを奪われるだろう。
それでも、平静を装い下から中途半端な動きを繰り出し、結局、決められるだろう。
そんな船木は船木ではない事を船木自身が知らないのである。
しかし少し気になる事がある。
今の船木のスパー相手がレスリング経験者の福田であると言う点である。
福田に簡単にテイクダウンさせられない自身を確認したとき、船木は鈴木とスパーしていた時の自身を再確認するであろう。
プライドしか無かった新日本での若手時代を。

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posted by shingol at 04:45| 新・レッスルする世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする