これまで総合のリングに上がったレスリング出身者の中で、私が最も驚いた闘い方をしたのはルーロン・ガードナーであった。
限られたルールの中で発達したゲーム性の高い競技スポーツのグレコローマンスタイルとしての闘い方そのままで吉田を圧倒したのである。
当時のグレコローマンスタイルは、実際に相手を転倒させる技術を発揮させるというよりも、スタンドで相手を攻める=相手に何もさせない事でパッシブを奪い、グラントで下の相手にポイントを稼ぐ闘い方を貫く選手が多かった。
グレコの選手は以外と柔道選手との組勝負では分が悪い。
ガードナーはグレコローマンの投げを封印し、堅実な競技のゲーム性あふれる闘い方を持って、吉田に何もさせなかったのである。
当然、あまりにもアマチュアチックともいえるガードナーの闘い方は評価を得られなかったが、私はこういう闘い方でも総合の試合をコントロールできるかと驚いた。
もしガードナーが総合を舐めたまま、グレコの投げ技そのままで闘おうとすれば、おそらく柔道技に転倒し、勝手の違う総合の呼吸の中で、パニックを起こす事になっていたであろう。
あるいは逆に、総合を心の中で巨大化し、同化しようとしていれば、自分の特性を忘れ、総合の真似事に徹し、短いリーチで下手な打撃を繰り出していたかもしれない。
しかしガードナーは総合をしっかりと自分なりに理解し、その上で、総合に同化する闘い方でなく、自分のバックボーンであるレスリングでの闘い方、技術を貫いたのである。
総合格闘技の技術、レベルは飛躍的に進化しつつ有る。
しかし未だ進化しているという最中であるという事は、まだまだ完成された競技スポーツの選手たちが、総合での注意点を頭に入れた上で自分たちのバックボーンの特性を生かせば、まだまだ勝てる段階なのではないかと私は思っている。
ホンマンは前述したどちらの意識を持って総合に挑むのかは分からない。
しかし、オロゴン戦で反射神経を研ぎすまして、全方位に対応できる呼吸を持ってラッシュをかけたホンマンならば、今回も総合に対応した呼吸と意識をしっかりと持って試合に挑むであろう。
実はヒョードルは体系的な特性以外に特別な非テイクダウン能力を持っているとは思えない。
ランデルマンには、あの反り投げを食らう前にも、大きくタックルからリフトされている。
藤田にも片足からリフトされている。
転倒されるのではなく、リフトされるという事は、実際に懸命に倒されまいと我慢していた事を証明している。
アローナには何度もテイクダウンを喫している。
私はホンマンがまわしをつけていなくとも、しっかりと四つに組めば、ヒョードルを圧倒できると思っているが、おそらくヒョードルは小川を転倒させたように、振り回しや打撃を用いてホンマンのバランスを崩し浴びせ倒し気味に転倒させる事を狙ってくるであろう。
片足タックルを狙ってくるかもしれないが、ヒョードルがホンマンの片足をつかんだ時、ホンマンの圧力にヒョードルがパニックにさえならなければ、ヒョードルの勝ちは固いであろう。
しかし片足をつかんでも相手も倒れないという場合の精神的・肉体的疲労は大である。
私はヒョードルが片足タックルに失敗すれば、ホンマンが限りなく勝利に近づくような気がしている。
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